三日月、笑って

婚外恋愛、今、思うこと。

1ミリの希望

りゅーさんとの初デートから1ヶ月。

そろそろ限界を迎えそうな時に電話できた。

するとりゅーさんは

♠「k-coは夜中出歩くとか無理やもんなぁ」

♦「夜中?色々工夫すれば出来なくもないけど、どうして?」

♠「再来週の後半は一人なんだよね」


!!

やっときた会えるチャンス!

頭をフル回転させて、どうすれば怪しまれずに夜中会えるかを考える。

りゅーさんはその時一人でも、仕事があるのは変わらない。

だから会えるとするならば仕事が終わった後、終電までのわずかな時間。

けれど、この電話では約束までに至らない。

電話を切るとすかさず

♦︰ありがとう、ありがとう、ありがとうー♡

♠︰でも、お互い無理なく、ね。

♦︰たまには無理してだって会いたいもん。

♠︰そうだね、でもしっかり決まってからまた相談させてね。k-coに変な負担はかけさせない。ハッピーエンドレスにしたいから。あと数十年一緒にいるんだよ(笑)


ずるいなぁ。

これを言われてしまったら私はもう動けないよ。

りゅーさんからの相談を待つしかないか。

冷静を装ってそれからの日々は楽しいこと中心のメールを送る。

その中に手の写真が欲しいと伝えるけど、ひらりとかわされる。

忙しいの分かってるし、家と職場の往復で一体どこで写真を撮るのかって言われればそれまでだけど、「いいよ」とか「だめ」とか、そのことに一言も触れてくれないのが淋しくて悲しくて。


それから一週間後、また電話で夜中のデートについて話すも、りゅーさんは乗り気でない様子が会話の端々から感じられる。

分かるんだ、りゅーさんが思ってくれてることは。

昼間や夜ではなく深夜で、何かあった時にどうにもこうにも言い訳出来ない事。

私のことを考えてくれていること。


でも、でも。

もう私も限界だった。

♦︰こうなったら駅で待ち伏せしてやるー!もうメンタル落ちるのは充分、飽きた!困らせると分かっていても言っちゃうからね。会いたいの、ぎゅーしたいの。生身のりゅーさんに触れたいの。

♠︰駅に来ても何も出来ないし、勿体ないだけだよ。休みだったり、早上がり出来たり、k-coや、自分がフリーの時とかに、落ち着いて会いたいなと思うんだ。

♦︰勿体なくなんてないよ。ただ30分だけでも会いたい、それだけなのに。会うのは次回に持ち越しってこと?それならすっぱり断って。1ミリの希望も持てないように諦めさせて。


こんなに自分の感情を露わにしたのは初めてだった。

でも、もう伝えずにはいられない。

すると、

りゅーさんの手の写真と共に送られてきたのは

♠︰手ががさがさ、こんな手でもよければ。仕事中にはk-coに会ってどうこうは出来ないからさ。会うのであれば、金曜日、終電間際に30分位会うようにしようか。出来る?


りゅーさんの手は1ヶ月前にデートした時に見たものとは全く別物だった。

あちこち傷ついて、見ているだけで痛そうな手。

でも、きれいな手だから好きな訳じゃないよ。りゅーさんの手だから。

お仕事頑張ってる手、大好きだよ。

この1ヶ月、本当にしんどかったんだなぁってその写真を見たら分かる。


その中で私のわがままを受け入れてくれた。

ありがとう。

この30分、絶対に無駄にしないからね。

妄想旅行

年も明けてしばらく経った。

相変わらずりゅーさんの休みはなく、そろそろ連続勤務1ヶ月を迎えようとしていた。

私がどんなに心配するメールを送ったところで

♠︰今がやる時なんだ。だから頑張ってと言ってね。

と返ってくる。

せめて、このメールの中だけでも楽しいこと出来ないかなぁ。

よし、思いついた。


♦︰今日は一日休みで私とデートだとします。どこ行きたいですか?♡

♠︰どこ行こうかなぁ、温泉!かなぁ。

♦︰温泉!いいねー!りゅーさんの浴衣姿ー♡


ここでりゅーさんは仕事モードに入り、しばらく連絡が取れない。



そうだ!このまま終わらせるのはもったいない。

♦︰温泉プランがあまりにも楽しそうなのでこのまま掘り下げてみようと思います。今日は私のおバカな妄想にお付き合いくださいませ♡

♦︰まずは場所ね。温泉街で有名な○○に決定!特急列車に並んで座ってね、ずーっと手をつないでるの。平日で上り電車はほとんど人いなくて、それもまた贅沢。


このままつらつら送ってもいいんだけど、せっかくだから時間経過と共に送ってみようっと。


【昼】

♦︰温泉街到着!まずはお参りしてね、お互いの長生きを願うの。そして名物を食べ歩き。

♦︰それから遊覧船。デッキに出てね、風が冷たいのをいいことに寄り添っていられるんだよ。お客さんもほとんどいなくて貸し切り状態。いいでしょ♡


【夕方】

♦︰まだまだ遊ぶよー!温泉街と言えばやっぱり射的🎯りゅーさんの狙いを定める姿にまた私は惚れ直してしまうの。スマートボールでもいいなー。


と、ここで休憩に入れたであろうりゅーさんから返信が。

♠︰も、妄想が止まらないね。。


やばい、やってしまったか。。

♦︰まだ温泉入ってないけどもうやめるもーん!

♠︰いやいや、一緒に温泉宿はいろうー!

♦︰言ったね?最後まで付き合ってもらうからねー♡


♦︰やっとこ宿到着。いっぱい歩いて遊んだからまずはゆっくり温泉に入るの。お肌つるつるだよ♨お部屋に戻るとりゅーさんが待っていて、りゅーさんの浴衣姿に私は更にのぼせてしまうんだ。

♦︰そして美味しいお料理に舌鼓。私の苦手なイクラはりゅーさんにあげるね。りゅーさんの苦手なたくあんは私が食べる(๑´ڡ`๑)


【夜】

♦︰窓辺で川のせせらぎを聞きながら二人で月を眺めるの。狙ったかのように、その日は三日月が笑ってるんだよ。

♦︰そして、りゅーさんの腕の中で眠るの。りゅーさんの心臓の音を聞きながら。


♦︰なんて幸せなんでしょう♡これにてk-coの妄想劇場おしまいでございます。長らくお付き合い頂き、ありがとうございました♡


そして日付が変わる少し前。

♠︰おー!素敵な話だなぁ。一緒に三日月みたいね。ほんと、一緒にいったみたいで良かったよ!妄想だけど、現実のような。温泉宿いった気分❤

♦︰え、ほんとに?!呆れてない?ちょっと自分のバカさ加減に凹みつつあったんだけど💦でも、実は私もすごーく楽しかったの。一日幸せ気分でいられたんだ。

♠︰呆れてないよ、むしろほんわか。一緒にいけたらいいなぁ、と思いながら。難しいのはわかってるけどね!



こんな私の呆れるような妄想癖も受け止めてくれるりゅーさん。

彼は菩薩なのかもしれない。。

でも、私のことバカだなーって思った瞬間に、りゅーさんの力がその時だけでも抜けたなら、それでもいいかなって思えるよ。

秒速5センチメートル

私はハッピーエンドで終わる映画が苦手でした。

なんで幸せになるって分かってるのにわざわざ見なくちゃいけないのって思ってた。

恋愛映画なんて特にそう。

すごーいひねくれ者。

誰も救われないような、ズドーンって落とされるような、そんな邦画ばかり好んで観てた。


今でもやっぱり暗い邦画は好きだけど、最近は自分の中で少しずつ変わってきて。


この前レンタルビデオ屋さんに行った時に、手にしたのが

「秒速5センチメートル」


「君の名は。」

の監督がその前に手掛けた短編連載アニメーション。

同級生同士の恋心を時間経過と共に追っていくストーリーなのだけど、思わずボロボロ泣いてしまった。

どんな形でもこの二人が幸せになれますように、そう願わずにはいられなかった。


今は恋愛映画も恋愛の歌もいいなぁって思えるようになったよ。


私がこんな風に色んなことを広く受け止められるようになったのもりゅーさんのお陰。

私の凝り固まった固定観念も、ひねくれた心も優しく溶かしてくれる。

きっとりゅーさんは

「えー、そんなことないよー」

ってふにゃっとした笑顔で言ってくれるんだろうな。