三日月、笑って

婚外恋愛、今、思うこと。

切り取った一瞬

会えるかもしれない。


朝イチのりゅーさんからのメールで

慌てて支度をする。


ほんの少しだけの外出。


会えたとしても、きっと本当に短い時間なんだろう。

それは短い文面からでも分かる。


それでも

ほんの一瞬だけでも顔が見たい。


5日前、もしかしたら会えていたかも。

そんな風なやりとりがあったもんだから

もう会いたくて会いたくてウズウズしてる。


きっとりゅーさんも同じ。

だから例えほんの短い時間でも私に知らせてくれたんだって。


会えるのは仕事終わりなのに

朝から心臓が痛くて

そわそわする。



終業と同時にタイムカードを切る。

急いであの街に向かう。

信号待ちでスマホを確認すると

いつもと同じような場所にいるってメールが来てた。


ようやく着いていつもの場所あたりを見回す。

んー、どこだろう?

時間ないのに。

こんなところで迷ってるなんてもったいない。


キョロキョロと辺りを見回しながら探していると

少し前を歩くりゅーさんらしきひとを発見する。

あの鞄、

あの後ろ姿、

あの歩き方、


見つけた。


どうしよう、顔がとけそうな位嬉しい。

シャンとしないと。

小走りで駆け寄ると

何かを察知したように

りゅーさんが振り向く。


あ、またいつものポーカーフェイスだ。

でももう慣れっこだもんね。

そういえばこの表情が怖いって今日は思わないなぁ。

それってもしかして私の気持ちにも関係してるのかな。

もしそうなら嬉しいかも。

だって5ヶ月も会えなくても

あんまり揺るがなかったってことだから。



話したいことリストは上書きされまくって

本人を目の前にするとそのほとんどが頭から飛んじゃって

それでも、会わなかった期間に起こった出来事を矢継ぎ早に話す。


前回会ったのは○月○日だよ

とか、

いつもの自転車置き場の番号がりゅーさんの誕生日だったからラッキーだった、なんて話を


りゅーさんはよく覚えてるね、すごいなぁって感心したように、ちょっと呆れたように言った。

それだけ自分の中にりゅーさんの存在があるんだって、その時改めて気づいた。


話したいことはいっぱいなのに

うまく言葉にならなくて

その度にりゅーさんの顔を見る。

話さなくても、こんな風に顔が見られるなんて、なんて贅沢な時間なんだろう。



♦️「りゅーさんのこの夏一番の思い出は?」

♠️「えー??なんだろう?んーー、じゃぁk-coに会えたこと?」

♦️「じゃぁって何よー!!」


目が合うとお互いふふって笑う。



♦️「あ!名前。やっと呼んでくれた。ね、もう一回呼んで?」

♠️「k-co、なかなか会えなくてごめんね」


ちょっとちょっと!

もう少し甘い言葉を期待してたのにっ!

よりによってごめんねって!

しかもそんなに満面の笑みで言わないでよー!

可愛すぎるじゃないか。


容姿や振る舞いは時が経って変わっても

笑顔はあの頃のまんま。

くしゃって笑う顔があの頃も大好きだったな。



りゅーさんのほっぺたに手をあてると

あったかさが

優しさが

愛しさが溢れてくる。


りゅーさんに触れると

からだの内側がきゅーってなる。


私はこれからもきっと

りゅーさんに恋し続ける。


時間作ってくれて

待っててくれて

ありがとう。


走って仕事に戻るりゅーさんを見送って

ふぅ、とひといき。

上を見上げると

道沿いの街頭に一斉に光が点った。


毎日ある光景だろうに、

その瞬間に出合えたこと。


これからも

そんな風に過ごしていけたなら。