なんとなく、りゅーさんの気持ちが分かったような分からないような。
核心に触れないやりとりが続く日々。
数日後、私は友達とランチの予定。
しかも一人で行動出来る貴重な日。
ランチの後は一人で買い物へ行こうか、
散歩にしようか、
カフェもいいかも。
なんて浮かれたメールを送信。
♠️:楽しそうだね。その日は休みじゃないけど、その前日は休み。残念だね。
♦️:前日なら休みなのか。残念だなー。前日ふらりふらりしてたら偶然に会えるかな、なんてね。
♠️:偶然でも必然でも、その日平気ならふらりしてみる?
ん?
なんだこれ?
会えるってことなのか??
奇跡的に、数時間なら家を出られる。
偶然、必然。
なんでもいい。
会えなくても、気持ちだけは連れて歩きたい。
【その日】当日。
連絡せずに出かける。
何度かりゅーさんと待ち合わせしたあの街へ。
着いてから
♦️:ふらり、ふらり。
♠️:もうふらりしてるの?時間はどのくらいあるの?
♦️:○時には帰らないと。
♠️:○○にある、いつものところに行こうか。
♦️:会いたい
♠️:うん。
いやいや。
なんだかうまく行きすぎな気がしてならない。
これは夢なのか。
それとも何かの罠なのか。
震える手でスマホを握りしめて待ち合わせ場所へ。
♠️:着いたよ
しばらくすると、そこにりゅーさんの姿が見えた。
一年振りに見る顔。
本当に私の目の前にいる。
ちょっとした警戒心からマスクをしていた私。
♠️「風邪ひいてるの?」
♦️「ううん」
♠️「何?変装?そんなに人気者なの?笑」
一年振りの第一声がそれ?
顔もなんだか怒ってるみたい。
一年と少し前に思ったことがフラッシュバックする。
何度か歩いたその道をまっすぐ前だけを見て歩く。
話したいことは山程あるのに言葉が出てこない。
なんでこんなに居心地悪いの?
もう気持ちはすれ違ってるのかな。
それでも話を振ってみる。
この前通りかかった、知らない小学校の運動会。
午後の部が始まる前のブラスバンドによる校歌の演奏。
私たちが小学生の時。
りゅーさんは大太鼓をやっていて。
私は憧れの小太鼓。
♠️「えー、そうだったかな?覚えてないなぁ」
私の記憶違いじゃないはずなんだけどなぁ。
かみ合わない会話を続けながら
着いた先は何度か来たお部屋。
部屋に入ると
♠️「シャワー浴びる?」
ちょっと待って。
こんなのやだ。
まだ何も話してないよ。
何も答えられない私を見ながら
♠️「なんて顔してるの」
とちょっと困ったような笑顔でベッドに座るりゅーさん。
私はとてもじゃないけど隣になんて座れる心境ではなくて、
ベッドの横にある椅子の上で体育座りをする。
♦️「もう寺くんの気持ちはないのかと思ってた。メールも素っ気ないし」
♠️「仕方ないでしょ。俺がどうこう言ったところで会えないし、事実も変わらないんだから」
♦️「気持ちなんて1ミクロンも見せてくれなかった」
♠️「例えば俺の気持ちが盛り上がりすぎてk-coの家に押しかけてもいいの?そんなことになったら悲惨な結末しかないよ?」
♠️「あ、ひとつ明るい結末あるな。海外逃亡とか」
♦️「あったかい南の島がいいなぁ」
♠️「でもk-co、子どもと離れられないでしょ?」
正論、全くもって正論。
そうだ。
りゅーさんはそういうひとだった。
出来ないことは口に出さない。
感情の起伏が激しい私と
常に一定なりゅーさん。
二人を足して2で割ったら丁度いいのにね、
そう言う私に
♠️「k-coも一定ならずっと交わっていられるよ」
もう何も反論出来ません。
りゅーさんがどんな気持ちでこの一年を過ごしてきたか。
多くは語らないけど、
その声から伝わってきた。
私が思うよりも遥かに深いところで
私を思ってくれていた。
敵わないなぁ。
♦️「今なら気持ち伝えていいの?」
♠️「いいよ」
♦️「すき」
♠️「すき、だけ?だいすきじゃないの?」
♦️「うん、だいすき」
♠️「ありがとう。嬉しい」
りゅーさんの顔がいつの間にか私の好きな笑顔になってる。
そうか、街中でのあの怖い顔は
きっとりゅーさんの変装なんだ。
今、目の前にある
このふにゃっとした笑顔。
私だけに向けられる優しい眼差し。
やっとここに戻ってきた。
ただいま。